DB 移行の実態とモダナイゼーションの進め方
このページでは弊社が担当した SQL Server データベースのクラウドへの移行事例とモダナイゼーションの進め方を解説します。同じ内容を Youtube にて動画でもご紹介しています。
SQL Server のクラウド移行事例
弊社が担当させていただいた、オンプレミスの SQL Server データベースを、クラウドへ移行する案件として、実際にどのようなものがあったのかを、 3 つご紹介いたします。

食品メーカー様の事例
データセンターやハードウェアといった、インフラに関わるコスト削減を目的として、自社商品を販売するE-コマース システムの、クラウド化を決断されました。
データ サイズは 100GB と、それほど大きくありませんが、自社の売り上げに直結する重要なシステムです。入念なアプリケーションと手順の検証を経て、約 12 か月で、無事にオンプレミスのシステムを、クラウドにもっていくことに、成功しました。
大手通信キャリア様の事例
システム拡張をきっかけに、クラウドへの移行を決断されました。
データ サイズは 1TB と、それなりに大きく、事業展開に必要不可欠な、法令に基づく、各種申請業務を、電子化するシステムです。
既存システムをクラウドへ移行したのち、システムを拡張する、というプロセスを通じて、約 6 か月で、オンプレミスのシステムをクラウド上で拡張することに、成功しました。
大手旅行会社様の事例
ハードウェアの保守切れをきっかけに、自社データセンターからクラウドへの移行を決断されました。
データ サイズは 3TB と極めて大きく、自社の事業を担う、基幹システムそのものです。
関連するシステムも多岐にわたるため、非常に難易度の高い案件でしたが、約 9 か月で、クラウド化を実現しました。
このように、業界を代表する様々な企業で、事業の収益に直結する、極めて重要なシステムのクラウド化が、
もうすでに、実施されています。
移行に際して弊社に求められた役割
上述の事例も、移行に際しては、何かしらの課題を抱えており、実際、弊社には、次のような役割を求められました。

このように、弊社は、SQL Server に関する、各種サービスを豊富に取り揃え、お客様の、クラウド移行を、強力に、支援させていただいております。
目的と目標が一致しないクラウド化の実態

上述の移行事例の動機は、コスト削減、システム拡張、保守切れ対応、ですが、いずれも移行先は IaaS でした。
しかし、これら移行の動機を根本的に解消しようとするのであれば、単なる IaaS への移行ではなく、
データベースとアプリケーションを PaaS へ移行、つまり、システムのモダナイゼーションを選択すべきです。
物理的なデータセンターやサーバー リソース、論理的な基本ソフトウェアとミドルウェア、の維持・管理は、スケール メリットを生かせるクラウド プロバイダーに任せ、自社のコアコンピタンスにつながるアプリケーション開発に、貴重なリソースを集中投下し、PaaS を最大限に活用した、疎結合で、スケーラブルなシステムを、いち早く実現すべきです。
このことは改めてお伝えするまでもなく、皆さんすでにお分かりだと思います。
それにもかかわらず、システムのモダナイゼーションではなく、IaaS への移行が選択されるのは、何故なのでしょうか。それは、モダナイゼーションのジレンマがあるからです。
モダナイゼーションを阻害する要因

モダナイゼーションを実現する場合、開発者や運用担当者の技術教育に加え、システムの再設計と再構築を行わなければならず、非常に多くのコストと時間を要します。
一方で、ユーザーにメリットのない移行に、多くの予算をかけられないといった事情や、ハードウェアやソフトウェアの保守期限内に、何としても移行を終えなければならないといった、差し迫った課題があることも事実です。
結果、限られた予算と期間の中では、IaaS への移行にとどまってしまうというのが実情です。
IaaS への移行で、ハードウェアの保守期限には対応できても、ソフトウェアの保守期限には対応できないため、少なくとも、基本ソフトウェアとミドルウェアは、最新バージョンへの移行が必要になります。
最新バージョンへの移行に伴うアプリケーションの動作検証は、システムのモダナイゼーションほどではないにしろ、相当なコストと期間が必要で、IaaS への移行が終わった後に、システムをモダナイゼーションする気力は湧きません。
また、IaaS への移行で、物理的なデータセンターやサーバー リソースの管理からは解放されますが、システムの運用保守に関する手間暇は、ほとんど変わりません。
結局、数年後には、また保守期限の問題を迎えることになるのです。
そこで、弊社がご提案させていただくのが、3 ステップで実現するシステムのモダナイゼーションです。
Azure におけるモダナイゼーションの進め方

Step 1 は、オンプレミスから IaaS への即時移行です。
移行には、Azure Site Recovery という Azure のサービスを使い、システムに手を加えることなく、オンプレミスの環境をそのまま、Azure 上の仮想マシンとして動作させます。
そのため、最もコストと時間がかかるアプリケーションの動作検証が最小限に抑えられ、ハードウェアにかかるコストをいち早く削減することができます。
Step 2 は、データベース運用の高度化と効率化です。
IaaS への即時移行によってクラウド化が実現できたとしても、データベースの運用効率は何も変わりません。
そこで、Cloud DB Doctor という弊社のサービスを使い、高度な専門知識が必要とされる DBA をクラウド化することで、運用効率を改善し、システムのモダナイゼーションに備えます。
Step 3 は、システムのクラウド ネイティブ化です。
これは、現状と目指すべき姿に応じて、徐々にクラウドの技術を取り込むことで実現します。
これにより、クラウドの恩恵を最大限に享受し、インフラ面を気にすることなく、アプリケーション開発に専念することができるようになります。
このステップは、コストと時間を要しますが、ステップ 1 と 2 を通じて、これらの問題を軽減しています。
それぞれのステップについて、もう少し詳しく、ご説明させていただきます。
Step 1 : オンプレミスから IaaS への即時移行

オンプレミスから IaaS への即時移行はAzure Site Recovery という Azure のサービスを使い、
Hyper-V 上の仮想マシンは、直接、VMWare 上の仮想マシンと物理サーバーは、構成サーバーを経由して、Azure 上の仮想マシンに変換することで実現します。
Azure Site Recovery を使えば、物理、仮想問わず、オンプレミス環境にあるシステムを、そのまま Azure 上の仮想マシンとして動作させることが出来るため、アプリケーションの動作検証を最小限に抑えられます。
さらに、Windows Server 2008、SQL Server 2008 を利用しているシステムの場合、Azure に移行することで、無償のセキュリティ更新プログラムを受けられるようになるため、モダナイゼーションを終えるまでの期間に、余裕を持たせることができるようになります。
このように、Azure Site Recovery を使うことで、コストと時間をかけずにクラウドへ移行し、ハードウェアにかかるコストをいち早く削減することが出来るのです。
Step 2 : データベース運用の高度化と効率化

ステップ 2 の、データベース運用の高度化と効率化は、Cloud DB Doctor という弊社のサービスを使って、DBA をクラウド化することで実現します。
Cloud DB Doctor は、対象となるシステムにエージェントを導入するだけで簡単に使い始めることができ、
データベース モニタリング機能に加え、アセスメントやサポートといった、プロフェッショナル サービスが提供されています。
SQL Server に関するお困りごとや、パフォーマンス低下などのトラブルが発生しても、お客様はプロフェッショナル サポートにお問い合わせいただくだけです。
モニタリング対象のデータベース情報は、Cloud DB Doctor に蓄積され、弊社の SQL Server プロフェッショナルと共有されているため、お客様は手間なくスピーディに、高品質なサポートが受けられます。
また、定期的なアセスメント レポートにより、問題の早期発見と未然防止を実現します。
このように、Cloud DB Doctor を使うことで、専任の DBA を雇用することなく、モダナイゼーションに向けた運用効率の改善が出来るのです。
Step 3 : システムのクラウド ネイティブ化

システムのクラウド ネイティブ化は、現状と目指すべき姿に応じて、徐々にクラウドの技術を取り込むことで実現します。
クラウド ネイティブ アプリケーションを実現するプラットフォームには、コンテナ オーケストレーションをサービスとして利用できる、コンテナ プラットフォームの CaaS (Containers as a Service)、
ミドルウェアといったインフラ面を気にすることなく、アプリケーション開発に専念できる、アプリケーション プラットフォームの PaaS (Platform as a Service)、
イベントドリブンなファンクションで構成されたアプリケーション開発に専念でき、極めて高いスケーラビリティが得られる、サーバーレス プラットフォームの FaaS (Functions as a Service)、
があり、右に行くほど迅速な開発ができるようになりますが、反対に自由な制御は失われていきます。
それぞれにメリットとデメリットがあり、これにしておけば間違いないという答えは存在していません。
システムの特長や要件に応じて、適切なプラットフォームを選択し、選択したプラットフォームに対応するように、コードの書き換え (リファクタ) や再設計 (リアーキテクト)、再構築 (リビルド) を繰り返し、徐々にクラウドの技術を取り込み、システムのクラウド ネイティブ化を実現します。
これにより、クラウドの恩恵を最大限に享受し、インフラ面を気にすることなく、アプリケーション開発に専念することができるようになるのです。
まとめ
- 業界を代表する様々な企業で、極めて重要なシステムがクラウドへ移行されているが、その多くは IaaS の活用にとどまっている
- 移行動機を根本的に解決するならモダナイゼーションが望ましいが、ジレンマによって IaaS への移行が選択されてしまう
- コストと時間を要するモダナイゼーションは 3 ステップで実現する
- Step 1 : オンプレミスから IaaS への即時移行
- Step 2 : データベース運用の高度化と効率化
- Step 3 : システムのクラウド ネイティブ化
関連情報
上記で取り上げたサービスは以下のページでご紹介しています。